2025/3/12

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トランス脂肪酸が多い食品を徹底解説!健康への影響と賢い避け方

栄養編集チーム 管理栄養士

公開日

2025.03.05

最終更新日

2025.03.12

家族や自分の健康を守るために、トランス脂肪酸について学ぶところからはじめましょう。

「健康診断でコレステロール値を指摘された」

「トランス脂肪酸について正しく知って食生活に活かしたい」

このような悩みを抱えていませんか。

トランス脂肪酸を摂りすぎると、健康に影響を及ぼす可能性があります。しかし、具体的にどのような健康リスクがあるのか知らない方も少なくありません。(1)

家族や自分の健康を守るために、トランス脂肪酸について学ぶところからはじめましょう。

 

そもそもトランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸は、脂質を形成する不飽和脂肪酸です。水素の部分がトランス型の構造をしています。トランス脂肪酸の摂取に対しては、WHOが各国に呼びかけるほど国際的に健康への影響が叫ばれています。(1)(6)

 

本章で解説するのは以下の2点です。

  • トランス脂肪酸の定義と生成方法

  • トランス脂肪酸の2つの由来

 

トランス脂肪酸の定義と生成方法

トランス脂肪酸は「少なくとも1つ以上のメチレン基で隔てられたトランス型の非共役炭素-炭素二重結合を持つ単価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸のすべての幾何異性体」と定義されており、食品の品質や安全性の国際基準を決めるコーデックス委員会が定めています。(4)(7)

トランス脂肪酸が作られるタイミングは、以下の3つです。(6)(7)

  • 脱臭のために行う油の高温処理のとき

  • 水素添加といわれる油脂を加工するとき

  • 反芻動物(はんすうどうぶつ/食べた草や植物を一度飲み込んで胃で消化した後、口に戻してもう一度噛む動物のこと)の胃のなかで微生物により作られるとき

上記を把握しておくと、トランス脂肪酸を避けた食品選びにも役立ちます。

 

トランス脂肪酸には天然由来と人工由来のものがある

トランス脂肪酸は、もともと自然界で作られる天然のものと、人工的に作られるものの2種類があります。(1)

  • 天然由来:牛や羊など反芻動物の胃のなかでバクテリアにより作られるため、牛肉や乳製品にトランス脂肪酸が含まれる

  • 人工由来:ショートニングやマーガリンなどを作るときに行われる水素添加や油の臭みを取る高温処理によって作られる

天然と人工で、健康への影響が異なるかどうかは分かっていません。

 

トランス脂肪酸は心臓病のリスクを高める可能性がある

トランス脂肪酸の懸念点のひとつに、心臓病へのリスクが挙げられます。(7)

トランス脂肪酸から自分や家族を守るために、トランス脂肪酸の心臓への影響について詳しく知りましょう。

 

心血管系疾患へのリスク

トランス脂肪酸の摂りすぎは、心血管系疾患のリスクを高めるといわれています。特に冠動脈性心疾患(かんどうみゃくせいしんしっかん)には注意しなければなりません。

冠動脈性心疾患とは、心臓に酸素や栄養を送る「冠動脈」が狭くなったり詰まったりして、心臓に血液が送れなくなる病気を総称した呼び方です。冠動脈性心疾患は、虚血性心疾患ともよばれ狭心症や心筋梗塞などがあります。(8)

 

心臓病とコレステロールの関係

トランス脂肪酸は、血液中の悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを増やし、善玉であるHDLコレステロールを減らします。

血液をアテロームといわれるドロドロのお粥のような状態にし、血管を狭くしたり詰まらせたりする原因になるのです。(8)(9)

 

心臓病以外の健康への影響

トランス脂肪酸は、心臓病以外にも健康に影響を及ぼします。

たとえば、高血圧症や脂質異常症のもととなる肥満や、喘息、アレルギー性鼻炎といったアレルギー性疾患のリスクです。このように心臓病以外にも、別の健康被害を引き起こす恐れがあります。(6)(15)(16)

 

トランス脂肪酸を多く含む食品4選

トランス脂肪酸が多い食品は、主に以下の4つです。

  1. 油脂類

  2. 調味料や香辛料

  3. 焼き菓子やスナック菓子

  4. 加工食品やインスタント食品

それぞれ詳しく解説します。

 

1. 油脂類

トランス脂肪酸が多い油脂類は、以下のとおりです。(2)

  • マーガリン(0.63g/食品100g)

  • ショートニング(0.61g/食品100g)

  • 植物性油脂(0.64g/食品100g) など

からあげやフライドポテトなどの揚げ物は、植物性油脂を使って調理するため、トランス脂肪酸が多く含まれます。(1)

また、植物性油脂は、熱を加えることでトランス脂肪酸を生成し、健康への影響が懸念されます。(7)

「家で作ったから大丈夫」というわけではなく、手作りでもお店でもトランス脂肪酸が含まれることに変わりはありません。

 

2. 調味料や香辛料

調味料や香辛料も、トランス脂肪酸を多く含みます。具体的な食品は以下のとおりです。(2)

  • マヨネーズやサラダクリーミータイプのドレッシング(0.39g/食品100g)

  • ドレッシング(0.38g/食品100g)

  • カレーやシチューなどのルゥ(0.46g/食品100g) など

一度に大量に摂取することはあまり考えられない食品ですが、継続的な摂取によってトランス脂肪酸の過剰摂取につながるおそれがあるため、注意が必要です。

 

3. 焼き菓子、スナック菓子

トランス脂肪酸が多い食品に、焼き菓子やスナック菓子があります。

  • ショートニング

  • 生クリーム

  • 揚げ油 など

上記のようなものを使って作るお菓子は以下のとおりです。(2)

  • 米菓(0.25g/食品100g)

  • ウエハース(0.46g/食品100g)

  • スナック菓子(0.17g/食品100g)

またお菓子ではありませんが、バターやショートニングを使用したクロワッサン(0.20g/食品100g)や総菜・調理パン(0.10g/食品100g)にも注意が必要です。

 

4. 加工食品、インスタント食品

トランス脂肪酸が多い食品で、忘れてはいけないのが加工食品やインスタント食品です。

以下のような加工食品やインスタント食品にも油脂が使われています。(2)5)

  • カップ麺や袋麺などのインスタントラーメン(0.10g/食品100g)

  • レトルト食品

  • 冷凍食品

どれも美味しく便利な食品ばかりですが、トランス脂肪酸が多いため健康へのリスクを考えて、慎重に取り入れる必要があります。

 

トランス脂肪酸を見抜くためのポイント

食品内にトランス脂肪酸があるかどうかを見抜くために、以下の2点を解説します。

  • 「トランス脂肪酸」の表示義務と現状

  • 「マーガリン」「ショートニング」「植物油脂」などの表示に注意

知らない間に必要以上のトランス脂肪酸を摂取しないよう、自分で見抜けるようになるためにもそれぞれ確認してください。

 

「トランス脂肪酸」の表示義務と現状

日本では、トランス脂肪酸が含まれている食品に対する表示ルールはありません。日本人は、トランス脂肪酸の摂取量が少なく、健康への影響も小さいとされているのが理由です。

また、食品に入っているトランス脂肪酸の濃度に関した基準値もありません。しかし、独自の努力により、トランス脂肪酸の濃度を抑えた商品を販売する事業者も増えています。(1)

 

「マーガリン」「ショートニング」「植物油脂」などの表示に注意

食品の原材料に以下の油脂類が表示されている場合、トランス脂肪酸を含む可能性があるため、注意が必要です。

  • マーガリン(0.65g/食品100g)

  • ショートニング(0.61g/食品100g)

  • 植物油脂(0.64g/食品100g) など

日本では、食品におけるトランス脂肪酸の表示のルールが決められておらず、多くの製品で植物油脂や食用精製加工油脂と記載されています。(1)3)

しかし、消費者庁は、事業者に対しトランス脂肪酸の情報を開示するよう指針を示しており、なかには「トランス脂肪酸」と明記されているものもあります。(4)

その一方で、はっきりと「トランス脂肪酸」と明記している食品は少なく、知らない間にトランス脂肪酸を摂取している可能性があるのです。

 

日常生活でできるトランス脂肪酸を避けるための方法

健康への影響が懸念されるトランス脂肪酸ですが、少しの工夫で避けることができます。

本章では、必要以上のトランス脂肪酸を摂取しないために、トランス脂肪酸を避ける以下の方法を紹介します。

 

家庭での調理方法の工夫

調理時間の工夫は、トランス脂肪酸を減らすのに効果的です。加熱時間を最小限にすることで、トランス脂肪酸の生成を抑えられます。(10)

使用する油はもちろん、加熱する食品の原材料にトランス脂肪酸が入っていないか確認して調理しましょう。

 

外食時のメニュー選びのコツ

外食時のメニュー選びのコツは以下のとおりです。

  • 揚げ物は極力避ける

  • トランス脂肪酸が入っている食品を使用しているメニューは避ける

  • 不明点は店員に確認する

 

飲食店で使用しているのは、新鮮な油ではないかもしれません。農林水産省は、油を繰り返し加熱しても、トランス脂肪酸の生成はごくわずかで、体への影響は無視できる程度としています。(17)

しかし、油の繰り返しの使用は、油を酸化させ、細胞やDNAを損傷させるラジカルとよばれる物質を生成し、動脈硬化やガンなどを引き起こす可能性があるのです。(18)

飲食店が繰り返し油を使用する頻度ははっきりとは分かりませんが、外食時の揚げ物は、極力避ける方が良いでしょう。

また、トランス脂肪酸を含んでいる食品を使っているかどうかは、メニューでは分からない場合もあります。不明点は、店員に聞くのがおすすめです。

 

市販食品を選ぶ際のポイント

市販の食品を選ぶ際は、トランス脂肪酸を含んだ原材料が使用されていないか確認します。

たとえば、原材料の表示に「植物油脂」や「食用精製加工油脂」の記載がないものを選びましょう。(3)

また、マヨネーズやルゥなどが使われている市販食品の場合、トランス脂肪酸が含まれている可能性があるため注意が必要です。

 

代替となる健康的な油の紹介

家庭で使う油をトランス脂肪酸を含まないものに見直すのがおすすめです。

トランス脂肪酸を含まない油には、オリーブオイルや亜麻仁油などがあります。オリーブオイルは、加熱も可能で調理油の代替に最適ですが、亜麻仁油は、加熱に向かないためドレッシングに使用するのが良いでしょう。(11)(12)(13)

また、食用油は悪玉コレステロールを上げるものがある一方で、亜麻仁油は悪玉コレステロールを下げる働きがあるため、心臓疾患の予防につながります。(14)

 

健康的な食事のためにトランス脂肪酸と上手に付き合おう

トランス脂肪酸は、たくさんの食品に含まれています。天然由来と人工由来のものがあり、日常生活において100%摂取を避けるのは難しい脂肪酸です。

しかし、トランス脂肪酸が多い食品や表示のされ方など、ポイントを把握していれば少しでも避けられます。

脂質自体は体にとって大切な栄養素ですが、過剰に摂取しないように注意が必要です。

家族や自分が元気に生活を送るためにも、トランス脂肪酸について詳しく理解して、できることから生活に取り入れましょう。

ヘルスカレッジ栄養編集チームは、管理栄養士や食の専門家が集まり、最新の栄養情報をわかりやすく、毎日の生活に役立つ形でお届けしています。

私たちの目標は、栄養に関する知識をシンプルに説明し、皆さんが健康的な食生活を楽しみながら実践できるようサポートすることです。

参考文献

References

https://www.health-college.com/article/trans-fatty-acids-foods