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不飽和脂肪酸がもたらす健康効果と食品選び方は?
医療編集チーム 医師
公開日
2024.11.29
最終更新日
2024.12.09
不飽和脂肪酸は、人間の体を構成する栄養素の一つであり、人間の体で合成できないものも存在しているため食品などからの摂取が必要です。 不飽和脂肪酸には、さまざまな健康効果が知られており、サプリメントや医薬品などにも利用されています。当記事では、不飽和脂肪酸の種類や健康効果、摂取したい食品などを詳しく解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
不飽和脂肪酸とは
人間の体を構成する脂質はお腹周りにつく脂肪をイメージすることが多いですが、細胞膜やホルモンの材料としても利用されています。脂質は化学的構造の違いにより、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類できます。(1)
不飽和脂肪酸は、構造の中に二重結合を持っている脂肪酸のことです。炭素は、他の原子と結合するための手を4本(水素は1本、酸素は2本など)持っています。単結合は、炭素同士の手を1本ずつ繋いでいる状態であり、炭素同士の2本の手がお互いをつなぎ合っているのが二重結合です。二重結合は、2本の手で繋いでいるので単結合よりも強く結合している反面、二重結合を維持するためにエネルギーが必要であり、単結合よりも酸化しやすいという特徴があります。
不飽和脂肪酸は、炭素と炭素の間に二重結合を持っている脂質であり、二重結合の数によって「単価不飽和脂肪酸(MUFA)」と「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」に分類できます。(2)
単価不飽和脂肪酸(MUFA)
単価不飽和脂肪酸は、炭素間の二重結合が一つだけ存在する脂肪酸であり、ミリストオレイン酸、パルミオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸などがあります。
コレステロールを直接的に上昇させませんが、エネルギーとして利用されるので飽和脂肪酸と同様に過剰摂取は肥満の原因になるので注意が必要です。(3)オリーブオイルなどに含まれています。
多価不飽和脂肪酸(PUFA)
多価不飽和脂肪酸は、炭素間の二重結合が複数存在する脂肪であり、構造の違いからオメガ6脂肪酸(n-6系脂肪酸)とオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)が存在します。多価不飽和脂肪酸の中には、人間の体では合成ができない必須脂肪酸も存在しています。必須脂肪酸は、食べ物やサプリメントからの摂取が必要です。
不飽和脂肪酸の働き
不飽和脂肪酸の特徴として、常温で液体の状態であることがあげられます。牛脂などからイメージされるように、飽和脂肪酸は常温では固形であり、不飽和脂肪酸は、魚の油やオリーブオイルなどのように常温では液体であることが多い傾向があります。
不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸よりも酸化しやすい性質があり、健康効果を維持して摂取するためには加熱や保存に注意が必要です。
どうして不飽和脂肪酸が健康な脂質とされるのか?
不飽和脂肪酸には、抗酸化作用と血液中の悪玉コレステロールを低下させる働きがあるとされ、健康効果が注目されています。胎児の成長にも不飽和脂肪酸が必要であり、人間の体で合成できないものもあるため積極的に摂取したい栄養素のひとつとされています。
不飽和脂肪酸の健康効果
飽和脂肪酸は、過剰に摂取すると血液中のLDLコレステロールを上昇させたり、肥満の原因になったりするため生活習慣病のリスクを上昇させます。不飽和脂肪酸は、生活習慣病のリスクを低下させる働きがあり、健康を維持するためにも必要です。こちらでは、不飽和脂肪酸の健康効果について紹介します。
心疾患による死亡リスクの低下
不飽和脂肪酸を摂取することで、心疾患による死亡リスクが低下したという報告もあります。動物性油脂に多く含まれる飽和脂肪酸は、過剰に摂取すると血液中の悪玉コレステロールを増やすことが知られています。(2)
血液中のコレステロールが上昇すると動脈内に蓄積して血管を詰まらせることがあります。心臓の血管が詰まることで心臓に十分に酸素や栄養素が行かず、心筋梗塞を起こす可能性があるのでコレステロールが上昇しないように対策が必要です。
イヌイット族は、心疾患による死亡率が低いことが知られており、1970年代のイヌイット族に対する研究によって魚油に含まれる不飽和脂肪酸が、心疾患のリスクを減らすことが明らかになりました。(4)そのため、心疾患のリスクを減らすためにも飽和脂肪酸の摂取量を減らして、不飽和脂肪酸に置き換えることが重要です。
炎症を抑える
不飽和脂肪酸は、炎症を抑える効果が知られています。炎症は、傷ができたり、病原体に感染したりしたときに起こる反応であり、炎症の4兆候「腫れ」「発赤」「痛み」「熱」を起こします。本来、炎症は、体に異常が起こっていることを知らせる重要な生体防御反応の一つですが、炎症が継続することでさまざまな疾患の原因となることがあるので注意が必要です。
マウスを用いた検証では、SREBP1(炎症初期における脂肪酸合成の増加を担う遺伝子領域)欠損させたマウスの体内では不飽和脂肪酸量が低下し、炎症反応が長引いたことが確認されました。
また、これらのマウスに不飽和脂肪酸を多く含んだエサを与えることで炎症を抑えることも確認されています。(5)炎症を抑えるということは、花粉症やアレルギー性鼻炎などに伴う炎症や関節リウマチなどの自己免疫疾患による炎症も抑える可能性があり、これらの疾患の症状を抑える効果が期待できます。
肥満を抑える
肥満は、動脈硬化や糖尿病、心疾患などさまざまな疾患のリスクを高めることが知られています。肥満は、摂取したエネルギーのうち余った分を脂肪細胞に蓄積することが原因で起こります。そのため、肥満を防ぐためには食事量を適正に保ち、運動習慣を身につけることが大切です。
また、肥満を予防するために食事内容にも気をつける必要があります。摂取する脂質のうち、飽和脂肪酸が過剰になるとインスリンの働きが弱くなり、短期的には内臓脂肪の蓄積に繋がり、長期的には皮下脂肪が蓄積することで肥満になりやすくなります。(4)
マウスを用いた検証では、多価不飽和脂肪酸を多く含むエサを与えたことで体脂肪の減少が確認されました。(6)飽和脂肪酸の摂取量を減らして、不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことで肥満を抑制する効果が期待できます。
脳機能の維持
多価不飽和脂肪酸は細胞膜を構成する脂質であり、脳細胞を維持するためにも不飽和脂肪酸が必要です。また、脳には多くの脂質が存在し、脳の発生、発達、機能維持にも不飽和脂肪酸は欠かせません。
不飽和脂肪酸の一種であるドコサヘキサエン酸(DHA)は、年齢とともに脳内から減少することが知られていますが、認知機能の低下にも関連があると報告されています。また、脳内のDHAの低下によって記憶力の低下、ストレス耐性の低下なども確認され、DHAの投与によって改善することも報告されています。(7)
不飽和脂肪酸には、脳機能を維持する効果が期待できるので、記憶力の低下やストレスが気になる方は不飽和脂肪酸の摂取を意識してみるのも良いでしょう。
不飽和脂肪酸を含む食品
不飽和脂肪酸の一部は、体内で合成することができないため食事からの摂取が必要です。一般的に、不飽和脂肪酸は、植物性油脂や魚油に多く含まれているので食事内容に気をつけることも大切です。
地中海食と言われる1950年代の南地中海地域の国々の伝統的な料理は、動物性由来の食品成分が少なく、オリーブオイルや豆類、魚介類など不飽和脂肪酸を多く含む食品を使っています。(8)
また、伝統的な和食には魚介類を多く使った料理が多く、飽和脂肪酸が少ない料理と言えます。こちらでは、不飽和脂肪酸が多いとされる食品について紹介します。普段の食事を、これらの食品に置き換えることで不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことも可能です。
オリーブオイル
オリーブオイルには、単価不飽和脂肪酸の一つであるオレイン酸が豊富に含まれています。動物性油脂と比べて血液中の悪玉コレステロールを上昇させにくいので、普段使っている油をオリーブオイルに変えてみるのも良いでしょう。
地中海食ではオリーブオイルがよく使われており、不飽和脂肪酸を摂取しやすいのも特徴です。
ナッツ類
ナッツ類にもオリーブオイルと同様にオレイン酸が豊富に含まれています。小腹が空いた時に食べる間食としてナッツ類を食べるのがおすすめです。
しかし、食べ過ぎると脂質の過剰摂取につながるので、量を決めてから食べてください。
大豆油
大豆油には、オメガ6脂肪酸が豊富に含まれており、コレステロールを低下させる働きがあります。大豆油以外にも、豆腐や納豆、味噌汁などの食品からも不飽和脂肪酸を摂取できるので、さまざまな料理に大豆を取り入れることをおすすめします。
青魚
青魚には、オメガ3脂肪酸が含まれており、悪玉コレステロール低下に加えて血液中の中性脂肪や血圧を低下させる働きも報告されています。また、オメガ3脂肪酸は、脳の認知機能を維持するためにも必要な脂肪酸です。
青魚に含まれている不飽和脂肪酸は、熱に弱い特徴があるため刺身が理想的な食べ方であり、フライや天ぷらなど高温での調理は避けた方が良いでしょう。
オメガ3脂肪酸との関連
オメガ3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸の一つであり、α-リノレン酸やEPA、DHAがあります。オメガ3脂肪酸は、体内で合成できないため必須脂肪酸に分類されており、欠乏すると皮膚炎などを発症することがあるので注意が必要です。
医療の現場でも活躍している
オメガ3脂肪酸は、医薬品としても流通しており、高脂血症の治療薬として処方されます。医薬品としてのオメガ3脂肪酸は、食事が終わってすぐに服用するように指示されることがあります。
空腹の時にオメガ3脂肪酸を服用しても血中濃度が上昇が確認されなかったことが報告されています。そのため、オメガ3脂肪酸の医薬品やサプリメントなどは、食事が終わってすぐに服用するようにした方が良いでしょう。(9)
まとめ
脂肪酸は、構造の違いから不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に分類できます。不飽和脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロールを減少させて心疾患のリスクを低下や抗炎症作用、脳の認知機能維持などさまざまな健康効果が知られています。
オリーブオイルや大豆、魚脂などの不飽和脂肪酸は含まれているので、積極的に食事に取り入れてみて下さい。
ヘルス医療編集チームは、医師や医療関連の専門家が集まり、最新の医療知識をわかりやすく、日常生活に役立つ形でお届けしています。私たちの目標は、正しい医療情報をシンプルに伝え、皆さんが健康的な生活を実践できるようサポートすることです。
参考文献
References
- 不飽和脂肪酸,e-ヘルスネット,厚生労働省
- 脂質,日本人の食事摂取基準(2025年版),厚生労働省
- 栄養の豆知識,公益社団法人福島県栄養士会
- 飽和 ・不飽和脂肪酸と肥満 ・動脈硬化性疾患,オレオサイエンス 第10巻 第10号(2010)
- 脂肪酸代謝制御による炎症反応の収束,公益社団法人日本生化学会
- 多価不飽和脂肪酸による肥満予防に関する基礎的研究,秋田大学
- 多価不飽和脂肪酸と脳機能,公益社団法人日本生化学会
- 【参考】Food-based dietary guidelines(地中海食に関する部分),農林水産省
- ロトリガ粒状カプセル2g,インタビューフォーム
- 不飽和脂肪酸とは?働き、健康効果と知るべきことについて医師が解説
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