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オメガ3脂肪酸の健康効果と摂取の注意点
医療編集チーム 医師
公開日
2024.12.02
最終更新日
2024.12.11
オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸に分類されており、体内で合成できないことから食事などから積極的に摂取したい栄養素です。また、オメガ3脂肪酸には、さまざまな健康効果が報告されており、医療の現場でも活躍しています。 当記事では、オメガ3脂肪酸の特徴や健康効果、摂取の注意点などを紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
オメガ3脂肪酸とは
オメガ3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸に分類されています。メチル基(CH3)という末端から3番目に二重結合があるためオメガ3脂肪酸と言われています。(1)二重結合は、炭素が他の原子と結合するためにある4本の手のうち、2本を他の炭素同士と結合している状態です。結合にエネルギーが必要であるため、飽和脂肪酸に比べて酸化されやすいという特徴もあります。
オメガ3脂肪酸は体内で合成できないため、食事やサプリメントなどから摂取する必要があります。その原因により、オメガ3脂肪酸は必須脂肪酸に分類されています。食生活が偏っていたり、無理なダイエットで慢性的な栄養不足が続いていたりするとオメガ3脂肪酸が欠乏することもあるので注意が必要です。オメガ3脂肪酸が不足すると皮膚炎を起こすことがあるので食事内容を見直したり、サプリメントを試してみたりしてください。(1)
オメガ3脂肪酸には、α-リノレン酸、DHA、EPAなどの異なる種類があります。これからはそれぞれのオメガ3脂肪酸についてご紹介します。
α-リノレン酸
α-リノレン酸は、植物性油脂に多く含まれるオメガ3脂肪酸です。体内では合成できないので、食事などから摂取する必要があります。摂取したα-リノレン酸の一部は、後述するDHAやEPAに変換されます。(2)
DHA(ドコサヘキサエン酸)
体内ではα-リノレン酸から作られる脂肪酸であり、魚介類に多く含まれています。血液の詰まりや炎症を抑える働きなどが報告されています。
EPA(イコサペンタエン酸)
DHAと同様にα-リノレン酸から作られる脂肪酸であり、魚介類に多く含まれています。オメガ3脂肪酸よりも早く、EPA製剤という医薬品として医療の現場で活躍している。
オメガ3脂肪酸の健康効果
オメガ3脂肪酸には、生活習慣病のリスクを抑えるなどの健康効果が報告されており、医薬品やサプリメントとしても販売されています。こちらでは、オメガ3脂肪酸の健康効果について紹介します。
心疾患リスクを低下させる
オメガ3脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を低下させる働きがあるとされています。悪玉コレステロールが増えると大動脈などの太い血管で固まって、粥状の物質(プラーク)として蓄積します。(3)
プラークが血管を詰まらせて、心筋梗塞などの心疾患の原因になることもあるので、血液中のコレステロールを維持することが健康維持にも重要です。(4)オメガ3脂肪酸は、血液中のコレステロールを低下させることで心疾患の死亡率を低下させることが臨床試験でも報告されており、高脂血症の治療薬としても利用されています。(5)
脳機能維持
脳内のDHA量が低下すると認知機能が低下することが知られています。脳には脂質が多く存在し、オメガ3脂肪酸も含まれています。しかし、脳内のオメガ3脂肪酸は加齢に伴って低下する傾向があり、認知機能も低下するので注意が必要です。
動物実験や人での調査では、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を投与することで、認知機能の低下を抑制することが報告されています。(6)加齢に伴って認知機能が低下すると健康寿命にも影響するので、オメガ3脂肪酸を継続的に摂取することも大切です。(7)
炎症を抑える
炎症は4つの兆候があり、「痛み」「発熱」「発赤」「腫れ」があります。本来、炎症は、病原体が体に侵入したり、物理的に体にダメージを受けたりした時に危険を知らせるための生体防御機構の一つです。
しかし、慢性的に炎症が継続すると、生活習慣病やがんの原因になることもあります。(8)オメガ3脂肪酸には炎症を抑える働きがあるとされ、慢性的な炎症にも効果が期待できます。
お腹の赤ちゃんの成長に重要
オメガ3脂肪酸は、お腹の赤ちゃんが正常に成長するために重要な役割を持っています。オメガ3脂肪酸は、脳などの神経組織の重要な構成物質であり、お腹の赤ちゃんの神経組織の生成のために多くのオメガ3脂肪酸が必要です。
平成28年に厚生労働省が行った「国民健康・栄養調査」では、妊婦に必要とされるオメガ3脂肪酸摂取量は、1日1.48gとされています。(1)お腹の赤ちゃんの健康的な成長のためにも、栄養バランスのとれた食事をするように心がけることが重要です。
オメガ3脂肪酸を含む食品
オメガ3脂肪酸は体内で合成できないため、食事などから摂取する必要があります。効率的にオメガ3脂肪酸を摂取するためにも、オメガ3脂肪酸が多く含まれている食品を普段の食事に取り入れることがおすすめです。こちらでは、オメガ3脂肪酸を多く含む食品について紹介します。
青魚
イワシやサバ、アジなどの青魚は、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を多く含んでいることが知られています。医薬品やサプリメントとしてのオメガ3脂肪酸の多くは、青魚を原料としているほどです。
普段、肉を中心に食べている方は、青魚に置き換えることをおすすめします。オメガ3脂肪酸は、熱によって酸化されるので刺身で食べるのが理想的です。フライや天ぷらなどは高温で調理するため、熱を加える調理をする場合は焼き魚や煮物などの料理にした方が良いでしょう。
えごま油
えごま油は、オリーブオイルやキャノーラ油などの一般的に料理によく使われる油よりもα-リノレン酸が多く含まれています。
α-リノレン酸は体内でDHAやEPAに変換されるので、青魚が苦手な方はえごま油や後述するあまに油などを摂取することもおすすめします。ヨーグルトやスープなどに混ぜたり、サラダにかけたりするとお手軽にえごま油を摂取できます。
亜麻仁油
あまに油もえごま油と同様にα-リノレン酸を多く含む油の一つです。あまに油も料理にかけるのがおすすめです。
あまに油は100gあたり57000mg、えごま油は100gあたり58000mgもα-リノレン酸を含んでおり、オリーブオイルの100gあたり6600mg、ごま油310mgよりも多いので料理にかける油をあまに油やえごま油に切り替えてみてはいかがでしょうか。(9)
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取バランス
オメガ6脂肪酸は、オメガ3脂肪酸と同様に多価不飽和脂肪酸に分類されています。オメガ6脂肪酸も必須脂肪酸であり、血液中のコレステロールを低下させる働きを持っていますが、過剰に摂取すると問題が起きることもあります。
理想的な比率はオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は1:4
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」によると、男性の場合は1日オメガ3脂肪酸摂取量2.95gに対して1日オメガ6脂肪酸摂取量は11.8gです。
女性についても1日オメガ3脂肪酸摂取量2.45gに対して1日オメガ6脂肪酸摂取量は10.3gであり、ほとんどの日本人はオメガ3脂肪酸1:オメガ6脂肪酸4の比率で摂取しています。(1)この1:4の比率から、オメガ6脂肪酸の割合が大きくなると問題が起こることもあるので注意が必要です。
オメガ6脂肪酸の比率が高いと炎症が起きる可能性も
オメガ6脂肪酸は、体内で炎症の原因物質であるアラキドン酸に代謝されます。アラキドン酸は、炎症反応を引き起こす物質でもあり、オメガ6脂肪酸の過剰摂取は慢性炎症につながる可能性もあります。
また、体内でアラキドン酸が代謝されると免疫機能を低下させる体内物質の原料にもなるため、オメガ6脂肪酸の摂取量が増えすぎないようにする食事バランスを考える必要があります。(10)
オメガ3脂肪酸の摂取するときに注意するポイント
オメガ3脂肪酸には、さまざまな健康効果があるので積極的に摂取したい栄養素です。しかし、オメガ3脂肪酸を摂取する場合は、いくつか注意したいポイントが存在します。オメガ3脂肪酸を適切に摂取しないと、健康を損なう可能性もあるので気をつけてください。
サプリメントの頼りすぎに注意
仕事などが忙しく食生活の改善が後回しになっている方は、サプリメントでオメガ3脂肪酸を摂取するという方法があります。ドラッグストアや通販などで簡単に入手できるので、食事だけではオメガ3脂肪酸が摂取できない方にはサプリメントに頼ってみても良いでしょう。
しかし、サプリメントに頼りすぎて食生活が乱れると、栄養不足に陥る可能性もあります。炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどを過不足なく摂取するためには、いろんな食材を使って食事内容を見直すことが大切です。
オメガ3脂肪酸の摂取タイミング
医薬品としてオメガ3脂肪酸は、「食直後」に服用するように処方されることがあります。
空腹時にオメガ3脂肪酸を服用すると消化管からの吸収率が低下するので、オメガ3脂肪酸のサプリメントについても食後すぐに飲んだ方が良いでしょう。オメガ3脂肪酸自体が脂質であり、食事中の油脂と混ざることで効率的に吸収されることが考えられます。
サプリメントの品質に注意
オメガ3脂肪酸のサプリメントは、さまざまなメーカーが製造・販売しています。サプリメントの中には、オメガ3脂肪酸の含有量が少なかったり、品質に問題があったりすることがあるので注意が必要です。
サプリメントの品質について気になる場合は、「GMPマーク」を確認する方法があります。GMPは、日本語で「適正製造規範」という意味であり、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにする基準です。GMPを遵守している国内の工場で作られたサプリメントはGMPマークがついているので、GMPマークがついているサプリメントを選んでください。(11)
バランスの取れた食生活を送ることが重要
オメガ3脂肪酸は、血液中のコレステロールを低下させることから医薬品としても利用されています。心疾患の死亡リスクの低下、認知機能維持、抗炎症作用などの働きがあるので、積極的に摂取したい栄養素です。最近では、サプリメントも販売されており、摂取する難易度も下がってきています。
しかし、食生活が乱れて栄養バランスが崩れると、オメガ3脂肪酸以外の必要な栄養素が不足する可能性もあるので注意が必要です。まずは、食事内容を見直して生活習慣を改善することからはじめてみてください。
ヘルス医療編集チームは、医師や医療関連の専門家が集まり、最新の医療知識をわかりやすく、日常生活に役立つ形でお届けしています。私たちの目標は、正しい医療情報をシンプルに伝え、皆さんが健康的な生活を実践できるようサポートすることです。
参考文献
References
- 脂質,日本人の食事摂取基準(2025年版),厚生労働省
- 不飽和脂肪酸,e-ヘルスネット,厚生労働省
- 動脈硬化,e-ヘルスネット,厚生労働省
- 飽和 ・不飽和脂肪酸と肥満 ・動脈硬化性疾患,オレオサイエンス 第10巻 第10号(2010)
- ロトリガ粒状カプセル2g,インタビューフォーム
- 多価不飽和脂肪酸と脳機能,公益社団法人日本生化学会
- 認知機能,e-ヘルスネット,厚生労働省
- 慢性炎症と加齢関連疾患,日老医誌 2017;54:105―113
- 日本食品標準成分表2015年版(七訂),脂肪酸成分表,文部科学省
- 脂肪乳剤の問題点,静脈経腸栄養 Vol.28 No.4 2013
- GMPマークを目印に健康食品を選びましょう!,厚生労働省
- オメガ3脂肪酸とは?健康な脂質であるオメガ3効果を引き出す食べ方と多く含む食品一覧
- オメガ3脂肪酸が多い食品ランキング10選
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